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木人形のおフダ(その三)

前回までのTHE AR@SUZI(あらすじ

多々さん(神社の偉い人)から強奪した魔法のおフダを手にした静ちゃん。
都合よく出会った夜ちゃん(被害者)で人体実験も済ませたし、効果はお墨付き!
あとは本命のコレ(親指)を落とすだけ。なに、強引だって? 正義は勝者が決めるんですよ。



……

基祐「じゃんじゃじゃーん! テキストのバイト数にして12KB、ようやく主役である俺様『神瀬基祐』の登場だぜ!」
基祐「おおっと、お前誰だ? っていう突っ込みはナシだ。俺、主人公。全てを凌駕する存在。以上」

kisuke01.jpg

ついでに言うなら、神瀬夜の弟であるということか。あとは静の飼い主。

静「わんっ!」
基祐「うわビックリした!?」
静「あたし、基祐さんになら飼われても……」
基祐「んだよ聞いてたのか……。ありゃ一流のジョークってやつでな、深い意味は……」
静「どうぞ、ここに輪っかとヒモがありますので、ご自由に」
基祐「話を聞け、このボケが!」
静「あいたっ!?」

ったく静ときたら、今日もこのテンションかよ。
仕事が終わって家でくつろいでたら、いきなりこの展開だ。

静「基祐さん、今日はもう仕事は終わりですか?」
基祐「あぁ、さっきな。それより、姉さんはどこ行った?」
静「夜さん? 知りませんけど……」
基祐「あそ。買いもんかな」

この時間は、いつも家にいるはずなんだがな? まぁそういうこともあるか。

静「あれ……夜さん、帰ってきたみたいですよ?」
基祐「ん、本当か?」
静「ペタッと」
基祐「フウッ!?」

ななな、なんだ!?

静「ありゃ? 戸が開く音がしたような気がしたんだけど……勘違いだったみたいですね」
基祐「……?」
静「まぁいっか。帰ってくるまで、二人でのんびりしましょ」
基祐「なぁ、おい。お前、なんかした?」
静「はい?」
基祐「いや……さっき、こう、体にバシッと何かが……」
静「……『こうバシッと何かが』?」
基祐「い、いや、スマン」

気のせい、か?

……

それからしばらく、二人で居間でのんびりした時間を過ごす。
畳から立ち上る夏の香と風鈴の音。差し込む西日とひぐらしの声。
まさに、落葉の夏。

静「んー……夜さん、帰ってきませんね」
基祐「そうだな。どっかで買い食いでもしてんのか」
静「小学生じゃないんですよ?」

静は、他にあてもないので俺んちで暮らしている(多々さんとこ等、ないこともないが)。
タダで住まい、食い、俺と姉さんの生活を妨害する。ポッと出の、癌みてぇなやつだ。

基祐「腹減ってきたな。姉さんも、まさか迷子なんてこともないだろうし──」

テレビを見ながら、茶棚から持ってきたせんべいに手を伸ばすと。

静「あっ」
基祐「お」

ちょうど静もせんべいに手を取ろうとして、指先がぶつかった。

基祐「邪魔すんな! しっしっ!」
静「ひ、ひどぉい! 普通こういうときは、軽く頬を赤らめて『す、すまん』とか言うもんじゃないんですか?」
基祐「アホかオマエ。誰がそんな青臭いマネ──」

ん、ん、んん……!?

基祐「い、いや……す、すまん……」
静「あれ……なんだ、そういうことも言えるんですね。あはっ、なんかかわいい」
基祐「ふおっ!? お、俺はなにを……!?」

今、口が勝手に……? しかも、マジで頬まで熱くなってやがる。

静「なんかこーゆーのって……カップルみたい。そう思いますよね?」
基祐「バカバカし……いや、お、おう、そう、だな……」
静「えへへ……。ってことは、あたしたちカップルみたいなんだ」

さっきから一体なんだ!? 俺は、いや、俺の口はどうなってんだ!?

静「とゆーことは、当然、あたしたちは好き合ってるんですよね?」
基祐「クタバレ──ぶるぁっ!?」

く、口が……!?

基祐「そ、そう、だな……」
静「そっかぁ、基祐さん、あたしのこと好きなんだ。嬉しいっ」
基祐「うぐぐ……ぐ、うぅ?」

ん……? でも俺、なんでこんなに静の言うことを否定してるんだ?
よくよく考えてみれば、俺たちはカップルなんだし、好き合ってるんだし、なにも否定するこたぁ……。

静「じゃあ……その証に、ください」
基祐「は? なにを?」
静「このクチビルに……あつぅ~いベーゼを!」
基祐「はぁ!?」

そ、それはなんだか知らんがダメな気がする! 好き合ってるはずだけど、その一線は越えてはいけな──

静「さぁ! 誓いの口づけを!」
基祐「結婚式かよ! ダ、ダメだそれは!」
静「『ダメ』? そんな日本語ありませんよね?」
基祐「ふぉぁ!? あ、あれ……そうだな、俺、何語しゃべってんだ?」
静「ならば! ズキュゥゥンッと決めちゃってください!」
基祐「し、しかしだな、待て! 待つんだ! 春の国民病の原因のように!」
静「そりゃ『杉』ですよ」

えぇい、そんなことはどうでもいい!

基祐「今はマズいんだ。その、昼飯が、焼肉、ギョーザ、ビールだったしな」
静「……ジュルリ」
基祐「何の音だよ!?」
静「そーゆーいかにも男性的な臭さ、むしろカモンです……!」
基祐「オマエ、実は多々さんばりの変態だろ」
静「失敬な。そもそも、昼飯にビールって。あなたタクシーの運転手でしょ? 仕事はどうしたんです?」
基祐「そんなの余裕だって。途中で検問があったけどな、ぶっちぎってきた」
静「……さっきから遠くでサイレン鳴ってるのはそのせいですか。なんか段々近づいてきてるような気がするんですけど?」
基祐「……」
静「……」
基祐「……目覚まし時計とかの音だろ」
静「そんなわけないでしょ!」

えぇーと、話を戻すとだな。

基祐「と、とにかく、キスはよくない。アレだ、オマエにはまだ早い」
静「御託はいいから、さっさとして」
基祐「無視かよ! って、はぅあ!?」

体が言うことを聞かん! な、なんでだ……? 俺ってここまで強烈にコイツのことを好きになっちまったのか!?

静「さぁ! 壊れるほど抱きしめてもつれ合い、そのまま魔のローリングキッスを!」
基祐「自分で『魔』とか言うなよ!」

コイツのテンションはいまいち理解できん……。

基祐「じゃ、じゃあいくぞ……」
静「はい……あ、でもその前に一つだけ」
基祐「あん?」
静「キスする前に、なにかクラッとくるような言葉、囁いて……」
基祐「く、クラッとくる言葉? 難しいなおい……」

え、えぇーと……。

基祐「それじゃあ、えぇー、ごほん」
静「わくわく……!」
基祐「愛してる。死ぬまで、いや、死んでも愛してる!」
静「んなっ!? そ、そのセリフは……?」
基祐「俺のストレートな気持ちだ」
静「マジですか……夜さんの妄想小説とまったく同じセリフじゃん。この姉弟、思考レベルが完全に同じ? つーか、リアルに言われると冷めるかも……」
基祐「そ、それじゃあ、いいか? 目、閉じて……」
静「あ、ちょ、ちょっと待ってください。冷静に考えると、こんなムードもなにもない状況じゃあ、ちょっと……」
基祐「なんだよ、誘ったのはそっちだろ。さ、ホラ」
静「だ、だから待ってくださいってば! ……って、むはっ、ニンニク臭ッ!」
基祐「むしろカモンなんだろ? そぉ~れ、油、酒、ニンニクの、三種の神器ブレス!」
静「クサッ! だっ、ちょっ、ダメ! それやっぱりダメです!」
基祐「……『ダメ』? なにソレ。そんな日本語知らないんだけど」
静「しまったぁ!? 裏目に出るなんて……!」
基祐「では、誓いのあつぅ~いベーゼを……」
静「待った! ストップ! ストップですってば! 命令ですよ!」
基祐「なんだか知らんが、その程度の言葉で、俺の溢る愛を止めることは出来ん! いざ!」
静「かっ、顔おっ! 顔を掴まないれくらさひ! くしゃいでしゅ!」
基祐「おうおう、赤ちゃん言葉とは粋な趣味だな。はぁーい、パパでしゅよー!」
静「ぎぃぇぇぇぇぇ!?」

……

この後、なんとかギョーザキッスだけは免れたものの、帰宅した夜さんにおフダを剥がされてしまい、全てが露呈してしまった。
やっぱり多々さん関係のモノは、信用しちゃダメだなぁ。


終わり


──おまけ

静「ところで夜さん、おフダのこと覚えてたみたいですけど……どうしてですか? 忘れるように言ったはずなのに」
夜「あぁ、アレね。多分、途中で多々さんが口を挟んだからじゃないかしら。ちゃんと命令が届いてなかったのかも」
静「まっ、また多々……あのヤロー!」
夜「……一応、あなたの倍くらい生きてるのよ、彼」
基祐「それはそうと、だ」
静「あ、基祐さん」
基祐「お前にはいっぺん、制裁を加えてやんなきゃだな。オイタが過ぎるんだよ」
静「えぇ!? どこがです!?」
基祐「……そうやってしらばっくれられる辺り、矯正しねーとな」
静「チッ……」
基祐「……で、罰ゲームはどれがいい? この中から選ばせてやる」
静「え、なになに……? 『目でピーナッツを噛む』『鼻でスパゲッティを食う』『逆立ちで町内一周』って、なんですかコレ!」
基祐「罰ゲームといったらやっぱりこれだろう。さ、好きなの選びな!」
静「どれも無理ですってば!?」
基祐「なんだと!? 静のくせに生意気だ! ギタギタにしてやるぅ!」
静「わぁーっ!? 助けてヨルえも~ん!」
夜「誰が『ヨルえもん』よ……」
静「てゆーか、静ちゃんを殴ろうとするガキ大将っておかしくないですか!?」
基祐「『おかしい』? 俺、そんな日本語知らないぜ?」
静「また裏目に!? ……って、あたしそんな命令してませんよ!」
基祐「『いいから殴らせろ』ってことだよ。言わせんな」
静「わぁぁぁ──!?」

……

──その晩。

静「こんばんわぁ……」

草木も眠る丑三つ時、夜さんが自分で書いたという本を探して部屋に忍び込んだ。

夜「むにゃむにゃ……」
静「よしよし、ぐっすり寝てますね……」

さぁて、例の本はどこかなっと……。

静「あ、見っけ! きっとコレだ……!」

よし、じゃあさっさと回収して、自分の部屋でゆっくり……。

……

で、自分の部屋。
えーとそれで、とりあえず気になるタイトルは?

静「『愛の記憶 ~切ナイ隕石~』」
静「……」
静「ぷっ、ぶはっ!?」

なにコレ!? ひょっとしてそれはギャグで言ってるの!?
「切ナイ隕石」ってナニよ? やばい、読む前からワクワクが止まらない!

静「んーでも、面白そうだけど結構長いし……時間かかりそうだなぁ」

夜さんが起きる前に、元の場所に戻さなくちゃだし、あまり余裕もない。
……よし、ここはとりあえず、一番の山場、ラストシーンだけサクッと読んじゃおう!
ラストは、基祐さんが夜さんを捨ててあたしの元へ走るシーンに変えられてるはずだし、うん、そうしようそうしよう!

静「どれどれ……ぷっ、ホントに夜さん、基祐さんに捨てられてる……!」

最後のほうを開くと、泣き叫ぶ夜さんを振り切って基祐さんが走り出すシーンが目に入ってきた。

「行かないで基祐!」
「駄目なんだ姉さん。俺には……俺にはっ!」
「……知ってるわ。あなたは、他に愛する人がいるのでしょう」
「……! どうしてそれを……」
「愛する人のことだもの。なんでもわかるわ。でもわたしにも、あなたとの愛の結晶が……!」
「まさか、俺の子が……!?」
「わかったのは昨日よ。だからお願い、この子のためにも……!」
「くっ、それでも俺は……俺はっ!」
「基祐!?」
「すまない! 俺は、自分の愛を偽ることはできないっ!」
「あぁ……行ってしまったのね、基祐……。さめざめ」

くすくすっ、愉快痛快!

静「そして夜さんを捨てた基祐さんはあたしのところへ……って、アレ、一人で隕石を壊すために宇宙船に乗り込んじゃった!?」

作戦が失敗したら、宇宙船もろとも木っ端微塵って、なにソレ!
他に愛する人がいる、っていうのは、夜さんを納得させるための嘘!?

静「じゃ、じゃあ、あたしはどこに出てくるの!?」

急いでページをめくる。すると……。

静「なになに……『好きだよ、静ちゃん』『多々さん……実はあたしもあなたを愛してしまったの……』って、なにコレ!?」

なんであたしと多々さんが結ばれてんの!?

静「『二人で地球から脱出しよう。そして、ぼくらは新たなアダムとイブになるんだ!』『ステキ……多々さん、抱いてぇ!』って、ヒィィッ!?」

とととと鳥肌が! じんましんが! 抜け毛がぁっ!?

静「コレ、あたしの『夜さんが捨てられる話』と多々さんの『多々さんと二人で地球を脱出する話』が合わさっちゃってるじゃない!」

もしかして、これも多々さんが命令の途中で口を挟んだ影響……。

静「そうだとしても、でも……! つっ、続きは……!?」

「アナタ……今月の給料は?」
「あはは、やっぱり火星じゃ神道信仰は流行らないねぇ。お賽銭は今月も三十円だ」
「どーすんのよ! 稼ぎもないくせに子供だけは八人も! テレビでやってる大家族スペシャル以下の貧しさよ!」
「平気さ! この調子で子供を増やしていけば、いずれ火星はぼくらの子孫で溢れる。そうすれば国教が神道になり、お賽銭もがっぽりさ!」
「何百年後の話よ!」
「とりあえず九人目はどうだい? いや、ここは生活リズムで染色体をある程度予想して、双子を狙うというのも……」
「お願いだから真面目に働いて!」

静「な、なにこのダメ家族……!」

例えフィクションだとしても……。
こ、こんな、こんな話、こんな話だけは……絶っっっ対に!

静「いやぁぁぁぁぁっ!?」

……

基祐「……むにゃ?」

女の叫び声? いや、猫か……。うるさい夜だな。



終わり
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/06/01(火) 00:13:20|
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