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鎌倉坂神社周辺散策

夕暮れ時の参道を歩くその足取りは、決して軽やかではなかった。

「もう帰りたいですよう」
「わたしも自分の身が一番大事だわ」
「そう言うなって」
女性陣二人がぐずる中、それを引き連れて歩くのは基祐である。
もうじき鎌倉坂神社の鳥居へと到着しようというところだ。

「あたし、やっぱり帰ります!」
緊張に耐え切れなくなった静が、踵を返そうとしたときだ。

「やあ、待ってたよ」
「お、多々さん……」
三人を呼び出した神主の声がし、立ち止まらざるを得なくなった。

「わざわざありがとうね。こんなことに付き合ってくれて」
「そう思うなら家に帰してください」
「それは困る。こんなこと、子供たちには頼めないからね」
「はあ……」
ため息をついた夜の肩は、普段のなで肩より更に下方に落ち込んでいた。

「頼むよ、ただ下見をしてくれるだけでいいんだ」
「下見って言ったって、肝試しの下見でしょ! そんなの嫌ですよ」
「しょうがないじゃないか。大盆のお祭り企画だから、頼める人が限られてるんだよ」
「ご自分で行かれたらどうです?」
多々の背後に広がる墓地を流し見ながら夜が言う。

「だめだよ。ぼくには『見えすぎちゃう』から」
「……なにがです?」
「なんだろうね、アレ。浮いてるし透けてるし触れないし」
「帰らせていただきます」
「ま、待ってってば! 冗談、冗談さ!」
こういった場面でも真面目になりきれないところが、自他共に認める多々の悪いところである。

「それに、今回ぼくは何もしないからさ」
「……本当に? こっそり隠れて脅かしたりするんじゃないですか?」
「そのための基祐くんだよ。ねえ?」
「そうなの?」
振り向いた基祐の顔には、今知った、と大きく書かれている。

「基祐くんにはぼくと一緒にゴールで待っててもらおうと思ってるんだ。どうせ君たちはぼくのこと信用しないだろうし」
「……なにあたしたちのせいみたいに言ってるんですか」
多々の信用がない理由は、多々以外の全員が知るところである。

「基祐くんが見張っててくれれば安心だろ? なあに、お化けなんて出やしないさ」
「さっき見えるって言ったじゃないですか!」
「それはお隣に干してあったパンティのことだよ。物干し竿に浮いてるし、透け透けだし、犯罪になるから触れない」
「うぅ……」
自分の肩を抱いて寒気に耐える静。

「ちなみに持ち主はトミ子さん八〇歳だよ。誰かと勝負したのかな?」
「推理すんな!」
口元をハンカチで覆いながら基祐が遮った。

「ということで、ぜひ行ってくれないかい? 行ってくれないとビビりって村じゅうに言っちゃうぞう」
「こっちこそ! 村じゅうにいいますよ。多々さんがトミ子さんの下着をジロジロ見てたって」
「言えば?」
「う……」
多々は、今更そんなことを村じゅうに触れ回られても何も問題ない。ある意味、これも日頃の行いがなせる技だった。

「よろしく頼むよ! 道程はこの紙に書いておいたからね」
「ど、童……?」
「ちゃうわ!」
ピシャリと静に言うと、神主は早く行けと手のひらでうちわを仰いだ。
暗くなっていく西の空を不安そうに見上げながら、ふたりはいつもより身を寄せ合うようにして林へと向かっていった。

「大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。村の子供達も回るコースなんだから」
多々は本心の読めない笑みをたたえて、一言付け足した。

「スリリングだとは思うけどね」

*

夏の青臭い雑草を踏みしめながら、静と夜は林の中を進んでいく。
空には広葉樹の枝葉が方々に伸びており、ただでさえ少ない夕日の明かりを遮っている。夜行性の動物も動き出しているのか、ぎゃあぎゃあという鳴き声も聞こえてくる。

「この道であってますよね」
「地図だとそうなってるわね」
「こんな山道を歩かせて、あの人は一体どうしようっていうんですかね」
静は周囲を見渡すが、近くに肝試しにそぐうロケーションは見当たらない。

「最初のチェックポイントは……この先にある廃屋の小屋ですね」
「廃屋……中に何か仕掛けがあるのかしら」
「そこから『魔除けの粉』を取ってくるって書いてありますよ」
「なにそれ? とにかく行ってみるしか……」
二人は次第に口数を少なくしながら、中継地点の小屋へ向かう。

小屋に近づくにつれ、なぜか足音まで殺しながら足を進める二人。
実時間より長く感じながらそこにたどり着くと、静はつばを飲み込み、戸に手をかけた。

「開けますよ、いいですね?」
「ええ、いいわ――」
夜が頷くの見て、静は手に力を込める――

「――待って、鹿島さん! なにか聞こえるわ」
夜の、小さいが緊張のこもった声。静は反射的に体をすくませ、手を止めた。

「小屋から何か話し声が……」
「本当ですか?」
耳を澄ましてみると、確かに何かを相談しているような声が中から聞こえる。静は意を決して、戸を指一本分だけ開いてみることにした。
――中には、狭い室内には似合わないほど体格のいい男が数人。

「誰にもつけられていないだろうな」
「こんなヘンピな廃屋に人が来るわけねえだろう。さぁ、早くブツを見せな」
「……せっかちな野郎だ。ほらよ、お望みのシャブ、一ポンド」
「よし、取引成立だ。寄越しな」
「待て、その前に金だ。ちゃんと持ってきたんだろうな」
「ちっ……おい、渡してやれ」

「――」
小屋の外の二人は絶句していた。

「ちょっ――! なんかとんでもないことになってますよ!」
「しかも白い粉ってあの粉のこと!? 持ってるだけで塀の向こうじゃない!」
「ににに逃げましょう! あんなの持ってこれるわけないですよ!」
「そうね、余計なことに巻き込まれる前に早く――」
二人があわあわしながら、指一本分開いた戸を閉めようとすると。

「誰でぇ!?」
「ひいっ!?」
閉める際に、中の男と静の視線が扉越しに正面衝突してしまった。

「誰か居やがるぞ! おい野郎ども、出入りじゃあああ!」
「ぎゃああああ!」
「女二人だ! 逃がすんじゃねえぞ! チャカ持って来い!」
「いやあああああ!」

……

「はあ、はあ、なんとか逃げ切ったわね……」
「弾丸が近くを通るとあんな音がするんですね……。死ぬかと思いました」
「わたしも……怖かった」
「……」
「……」
「もしかしてこれが肝試しの内容ですか?」
「……さあ。でも、もうこれ以上肝を試したくはないわね」
夜は足音が追ってこないか何度も振り返りながら、ようやく手ぬぐいで汗を拭いた。

「でもこの道、なんだかんだで肝試しの順路になってますよ」
「今更それどころじゃないと思うけど……」
「しかも一本道ですよ、これ。嫌でも行くしか無いみたいです」
「なんということなの……」
確実に暗くなっていく山中を歩く二人の足取りは、いつになく重かった。

……

「……なんですか、あのドでかい蜂の巣は」
「下手なことするとダルマになるまで刺されそうね……」
「そうっと行きましょう。そうっと、そうっと……」
「は、は、はっくしょっ!」
「ちょっ、夜さん! そうっとって言ったじゃないですか!」
「ごめんなさい、さっきの冷や汗が冷えて、ぶるっと来ちゃって……!」
「うわわ、出てきましたよ! しかもなんかあからさまに興奮してませんかコレ!」
「どうして!? わたし達なにもしてないのに!」
「わぁっ、また出てきた! ……ってもしかしてこの蜂、夜さんの黒い服に反応してるんじゃ?」
「ぎゃあああ! 飛んできたわよ鹿島さん!」
「あたしの方には来てませんよ」
「やっぱりわたしが狙われてるの!? ひええええ!」
「ってこっちに来ないでください、あたしまで危な、うわわわわ!」
「助けてぇぇぇぇ!」
「脱いでください! 早く!」
「無理! この下は全裸なのよ!」
「なんでよ!? どんな露出狂ですか!」
「和服は下着を付けないものなのよ!」
「いいから脱げぇぇぇ! 命とどっちが大切ですか!」
「走りながら脱げるわけないじゃ……うわ来たッ!?」
「ひいいいいい!」

……

「なんですかあのチェックポイントは! 崖の向こうじゃないですか!」
「まさか……このロープにぶら下がって渡れっていうの?」
「もう嫌! こんなの懲り懲りです! あたし、来た道を戻ります!」
「も、戻るの!?」
「夜さんもこんなのに付き合ってたら命がいくらあっても足りませんよ! それじゃ!」
「そ、そういうこという人ってだいたい真っ先に……ってあぁ、行っちゃった」
「……」
「……」
「……あれ、戻ってきたわね」
「居たぞ、さっきの女だ!」
「ひいいいい!?」
「戻ろうとしたら見つかっちゃいましたああああ!」
「一人で行動するのは勝手だけど、わたしまで巻き込まないでちょうだい!」
「お説教は後にして逃げましょぉぉぉぉ!」
「逃げるってどこへ!? もう行き止まりよ!」
「このロープを渡っていくしかないでしょ! それとも捕まって部品単位で売られるか、お風呂屋さんで働かされますか!?」
「ひっ、ひいいいい!」
「追ええええええ!」

……

「次の中継地点は?」
「もう少し先です。道は合ってますから」
「それにしても良かったわね。わたし達が渡った後、重みでロープが切れてくれて……」
「さすがにあの崖は超えられないでしょうからね。落ちた人が気がかりといえば気がかりですが……」
「お陰で安心して指定された『魔除けの御札』も取れたし。まさか渡った先の地蔵に貼り付けてあるなんて」
「しかもコレ……あの人達が落とした『魔除けの粉』ですよ。つい拾っちゃったけど、持ってていいのかな……」
「どう考えてもダメでしょ。後で警察に届けましょ」
「……」
「どうしたの? 鹿島さん」
「これ……まさか関係ないですよね」
静が足を止めて指差した先にあったのは、古ぼけた看板だった。

「『熊出没注意』……」
「夜さん、ここって熊が出るんですか?」
静が嫌な予感を拭いきれずに尋ねると、夜は一呼吸置いてから眉間を抑えた。

「どうなんです?」
「この近くでは出たことないけど、出ない保証は……」
「……急ぎましょう」
「そうね」
もはや静の表情は崩れなかった。
だがその時。

「ひっ!?」
「どうしたの?」
「い、今あそこに黒い影が……!」
「本当に? 気のせいじゃないかしら」
「本当ですってば! く、熊かもしれません!」
「そ、そうとも限らないわよ。もしかしたらさっきの残党かもしれないし」
「……」
「……」
「それはそれで怖いですよ! 変なこと言わないでください!」
「ご、ごめんなさい! 今のは悪かったわ」
と、そこへ。
今度は二人とも間違えないような大きな音。草木を掻き分ける音が遠くから近づいてくる。

「ここここっちに来ますよ! 死んだふりしましょう!」
「そんなの無駄よ! それよりまず落ち着きましょう! そうだ、こんな時こそ炊事洗濯にお掃除買い物……今日の晩ご飯は何にしようかしらぁー」
「ただの現実逃避じゃないですか! うわきたぁ! そ、そうだ、ちぇぇぇい!」
「な、何するの!? 離しなさい!」
「クマさんクマさん、中古だけど小さくて柔らかい美味しいお肉ですよ! たんと召し上がれ!」
「ひぇぇぇぇ!?」

「む、二人ともこんなところで何をやっているんだ」
「お代は結構ですので、どうぞゆっくり食べてくださいね! あたしがこの悪夢から抜け出すまで!」
「あへ、あへへ、もうダメだぁ。食べるのはいいけど、せめて痛くしないでちょうだいね、クマさぁん」
「……聞いているのか?」
「……え?」
「へぁ……?」
「そ、そこにおわすは、や、やま……!」
「山入端さん!?」
「何しとるんだね、こんな山奥で」
「山入端さぁぁぁん!」
「お会いできて光栄ですぅぅぅぅ!」
「なっ、何なんだねいったい!」


「……ということなのです」
「ふむ、それは苦労したな」
頼りない女性二人組のパーティに、自治会長の山入端を加えた三人で下山を目指すことになった。
ただ、やはりこの先も一本道のまま。またなにか起こりそうな不安はあるものの、男性がいるという安心感に二人の表情もいくらか和らいでいた。

「次の中継地点は墓地だな。ここが最後のようだ」
「ほっ……」
「よかったぁ……」
「……夜中の墓地が嬉しいのかね?」
「ただの墓地なら危険はないですからね」
「今更お化けが出たくらいじゃ、ドキリとも来ませんもの」
「たくましいことだ」
「ところで、山入端さんはどうしてこんなところに来たんです?」
「わたしか? ……まぁ、ちょっとした野暮用というやつだ。気にしないでくれたまえ」
山入端は四角い顔についている口元をわずかに緩めると、話を打ち切って先頭を歩いた。
静たちもこれまでとは格段の安心感を持って、光の届かない山道を踏みしめた。


「着いぞ、ここだ」
「普通のお墓ですね」
「それはそうよ。普通のお墓だもの」
今まで大変なことが続いただけに、もはや二人には『夜中の墓場』というだけではなんの影響もない。
静は家に帰って入る風呂のことを、夜は待たせている基祐の夕食の献立を考えていた。

「――さて、これでよしっと」
山入端は線香を片手に、山入端家先祖代々の墓の前で、何やらいそいそしていた。

「なにしてるんですか?」
「いやなに、ただの墓参りだよ」
「こんな時間に一人でですか?」
「近くまで来たのでね。ついでというやつだ」
「はあ」
線香が細い煙を登らせているので、二人もついでに山入端家の墓前に屈み込み、手を合わせた。


「一枚……」
「二枚……」

「え?」
「なにか言った? 鹿島さん」
「夜さんが言ったんじゃないですか?」

「六枚、七枚……」

「あ、あたしじゃありませんよ。嫌だなぁ、ここまで来て安心したところを驚かそうなんて、夜さんも人が悪いんだから」
「わたし何も言ってないわ! 鹿島さんこそ騙そうとしてるでしょう」
「違いますってば! や、山入端さんは聞こえますか!?」
「ぬぅ……確かになにか聞こえるな」
「嫌な予感がするわ……」

「八枚、九枚……」

「ま、まさか……?」
「ほ、本物の幽霊……!?」

「九枚、九枚……」

「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
「ひょぇぇぇぇぇぇ!」
絶叫する二人。なんと『先祖代々の墓』の墓石がひとりでに動いたではないか!
動いた霊石の隙間から、骨ばんだ細い手が現れた。
そして墓の中から、ぞるりと全身が這い出てくる――

「一枚足りないィィィィィィ!」
「でででで出たぁぁぁぁぁぁ!」
「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
恨めしい呪いの言葉に、二人は抱き合って震えるばかりだった。

「一枚足りませんわ! あなた、一万円札が足りませんことよ!」
「へ……?」
「一万円……?」
静の垂らした鼻水をほっぺたにくっつけながら、夜は涙目をこすった。

「ついに見つけましたよ! へそくり隠しの現行犯!」
「す、純……これは、その……」
「言い訳は無用です。こんなところにまで隠すなんて……なんって罰当たりな!」
「そんなところに隠れているお前のほうが……」
「お黙りッ!」
「ぬわっ!」
懐から取り出した扇子で、夫である重信の頬を打つ、山入端純(すみ)。
墓から這い出てきたのは、山入端と連れ添って何十年、妻として、母として家を支え続ける縁下の力持ちだった。

「お二人とも、驚かせてごめんなさいね。どうしても現場を抑えたかったのよ」
「は、はぁ……」
「これから重信さんには山ほど言わなくちゃいけないことがありますの。お二人は先にお帰りになってくださいな」
「わ、わかりました」
中年女性の凄みに完全に飲まれ、言うことのない静と夜。

「それじゃあ、わたしも帰るとしよう……」
「いけません。『お二人は』と言ったではありませんか」
「……どうしてもか?」
「どうしてもです」
ガクリと肩を落とす山入端。中々見られない光景である。

「この前も言ったばかりではありませんか! どうしてそうもお金に汚いんですアナタは!」
「ぬ、ぬう……」
いつも厳格で毅然とした態度。村民からの信頼も厚い、自治会長の山入端重信。
それがへそくり隠しの罪で妻から絞られて、肩幅ごと小さくなってしまったように見える。
この姿を衆目のもとに晒せば、次期会長の立場も危うくなりそうな、そんな気配すら感じられるお説教だった。

「だいたい――!」
「そもそも――!」
「先日だって――!」
純の説教は止まらず、傍から眺めていた二人は息を呑んだ。

「ゆ、幽霊より怖いかも……」
「年配の女性って……恐ろしいまでに強いのね」
やがて、後ずさるようにして墓地を去る二人だった。
姿は見えなくなっても怒声は聞こえ続け、声が聞こえなくなるまで二人は震えていた。

*

「――とまぁ、ちょっとしたアトラクション的なルートなのさ」
暗くなった神社の縁側で、蚊取り線香を焚いて陽気に語る多々。

「まずは廃屋に行って、清めの塩を取ってくる。入り口には仕掛けがあって、上から人形が落ちてくるトラップ付きさ」
「そのまま山道を通って、吊り橋を渡る。昨日の大雨で橋が壊れてないか気になるけど……まぁ二人とも子供じゃないし、危ないと思ったら戻ってくるよね」
「橋を渡ると御札があって、塩を御札を持ってお墓へ。そこに御札を置いて、墓を出る時に塩を撒いてくればゴールはすぐそこってわけ」
「ふうん」
よく冷えた桃をかじりながら、裸足で縁側に寝転がって気のない返事をする基祐。
水盤舎の水盤には、まだまだ食べ物が冷やしてあった。西瓜、梨、そしてきゅうりやトマトなど。
粗塩を付けて食べたら美味いだろうなあ。ビール欲しいなあ。そんな基祐の心の声が聞こえる。

「ふうんって……つまらなそうに言うけど絶対楽しいって! 一生懸命考えたんだから。きみも行ってごらんよ!」
「じゃあぜひ、自分で行ってみてください」
熱く語る多々の背中に、絶対零度に冷えた声がかかる。
もちろん、声の主は存分に肝を試した二人である。

「おお、お帰りなさい! どうだった? 楽しかった? 怖かった?」
「ええ、それはもう」
抑揚のない声で静が答える。

「そうかいそうかい、それはよかった!」
「ですので、多々さんも行ってみてください。今すぐに」
無表情で、夜が多々の背中を押す。その先にはスタート地点がある。

「い、今すぐかい? もうちょっと感想聞かせてよ」
「いえ、百聞は一見にしかずですよ、多々さん」
「さぁさぁ、早く」
二人の手、合わせて四本が、有無をいわさず多々をの背を追い立てる。

「な、なになに? どうしたの?」
「いいから早く」
「行ってみてください」
「わ、わかったよ。その代わり、戻ってきたら感想聞くからね。ここで待っててよ?」
「わかってますって」
「それじゃあ行ってくるけど……本当にどうしたの?」
「なんでもないですって。さぁ早く」
「はいはい。すぐに一周してくるからね」
多々は怪訝そうに振り返りながらも、暗くなった林の奥へと消えていった。

「さ、基祐さん。帰りましょ」
「え、いいのか? 多々さん待たなくて」
「いいのよ。帰りましょう、還るべき場所、わたし達の家へ……」
「なんだよ、その言い方。漫画のエンディングみたいだぞ」
「早くっ、早くっ」
「わ、わかったよ! 本当に何なんだ……?」
「うふふっ」
両手に絡み付いてくる二人の少女を引き連れて、基祐は車に乗り込んだ。
その行く先には、暖かな我が家の灯り(あかり)が待っていることだろう。安らぎと幸せの灯りが……。

――その晩。
何者かの絶叫が山々にこだまするのを、何人かの住人が聞いたという。
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  1. 2012/10/12(金) 04:02:49|
  2. SS(落葉の夏・B面)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

そんなバカな…

Tj64bsS5
この俺が

潮 を 吹 く な ん て
http://56K0C7xX.ujjz.info/56K0C7xX/
  1. 2012/10/25(木) 16:51:18 |
  2. URL |
  3. のび太 #HZlXEXwo
  4. [ 編集 ]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
  1. 2012/11/28(水) 12:44:04 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

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