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木人形のおフダ(その二)

THE AR@SUZI(前回のあらすじ)

クソ暑い山村に否応なく住まされている静ちゃんが、神主のおっさんとバッタリ会いました。
挨拶をすると、なんと彼は「魔法のおフダを持っている」というではありませんか!
なんでも、そのおフダを貼り付けると、他人を自由に操れるというものらしいのです。
これは試すしかない! そう考えた静ちゃんは、どこかに人体実験に適したデクがいないかと探していました。
するとそこに、一人の少女の姿が──



夜「──はい、ありがとうございました。またお願いいたします」

聞きなれた人の声が耳に飛び込んできた。

静「!」
多々「!」

多々さんと同時に目を見合わせる。

静「やりますか、人体実験!」
多々「ぼくにとっては本番なんですけどね。いきましょうや!」

珍しく意見が一致し、多々さんの額からおフダを剥がすと、そこの家から出てきた少女にダッシュで近づく。

静「夜さん!」
夜「あら、鹿島さん。……それに多々さんまで」

yoru01.jpg


多々「どうも、ご無沙汰しております」
夜「はぁ。これはご丁寧に」
静「なにのん気に挨拶なんてしてるんです、多々さん」
多々「おお、そうでしたね。今はそれどころでは……」

──そして、改めて目の前の女の子に視線を送る。
って、本人に「女の子」なんて言うと、ゴミを漁るカラスを見るような目で見られるけど。
見た目は……そう、十歳くらいの女の子なんだけど。黒くてさらさらの長髪も、和服をアレンジしたような服装も、日本人形のようで幼さを際立てる。
ただし実年齢は、その倍以上。本人は「大人だ」と言い張るから、子ども扱いすると怒るのだ。

夜「どうしたの、二人揃って。珍しい組み合わせね」
多々「いえね、ちょっと神瀬さんに頼みたいことがありまして」

神瀬というのは、この人の苗字。神瀬夜という。
遅くなったけど、あたしは鹿島静。多々さんは、多々順一郎という。

夜「頼みたいこと、ですか」
多々「ええ。実はこれなんですけど」
夜「……おフダですか?」
多々「はい。ちょっくら、こいつを身に付けてくれやしませんか?」
夜「……」

夜さんは、あたしと多々さんとおフダを、それぞれ三度ずつ、順番に視線を送り。

夜「遠慮しておきます」

身構えるように一歩距離をとり、そう返した。

多々「どどど、どうしてです!?」
夜「なにか裏があるでしょう、ソレ」
多々「何故それを!? って、イカン!」
夜「本当にお約束ですね……。そんな表情で迫られたら、なにかあると思うのが普通でしょう」
多々「う、ううむ……」

完全に先を見通され、つっかえ棒が取れたようにうなだれる多々さん。

静「ちぇっ、多々さんに任せるんじゃなかったかな」
多々「面目ない……」
静「せっかくいい木人形(デク)が手に入るかと思ったのに」
夜「……なんか恐ろしい相談してたみたいね」
静「いいですか、多々さん」

おフダを持つ手を遊ばせている多々さんに、渇を入れるように言葉をかける。

静「そういうときは、いきなり『これ、付けてください』って迫るんです。相手に考えさせちゃダメですって」
多々「ほうほう」
静「つける場所はどこでもいいんでしょう? だったら、パッと手を取って貼っちゃってもよかったんですよ。そうすれば、あたしたちは王、この人は奴隷、になったんだから」
夜「なんだか寒気がするわ……」
多々「きみは敵に回したくない、心底そう思うよ」
静「……二人とも失礼なこと考えてませんか? あたしはごく普通の女子高生ですって」
夜「随分真っ黒な女子高生ねぇ……」
静「なッ!? あたしのどこが真っ黒ですか! 新品同様、てゆーか完全新品のパールピンクですよ!?」
多々「……そういうところが真っ黒なんじゃないですかい?」
静「うぐ……」

多々さんにしみじみ言われるなんて、墓にまで持っていかなくちゃならないほどの恥だよ。

静「……ん? ねぇ夜さん」
夜「うん?」
静「なんか、さっきのお宅の奥さんが、夜さんのこと呼んでますけど」
夜「ホント? どうしたんだろ──」
静「ペタッと」
夜「ひぇあ!?」

すかさずおフダを貼り付けて、さて、これでデクの一丁上がりっと。

静「いいです? 多々さん。騙すってのはこういうもんですよ」
多々「……参考になりすぎて怖いよ」
夜「ちょっと鹿島さん、なにをしたの!?」

夜さんは、背中に貼り付けられたおフダを取り払おうと、背中をわきわきと擦っている。

静「あ、ダメですよ触っちゃ! 取れちゃいますから」
夜「はわぁ!?」

夜さんは、一瞬体を硬直させると、背中に回していた腕をゆっくりと下ろした。

夜「う、腕が……動かない!?」
静「へぇー……今のも命令として受け付けられてるんだ。本物なんですね、これ」
多々「もちろんさ。ぼくのご先祖様はすごいんだよ」
静「『ぼくはすごい』と言わないあたり、ちゃんと弁えてるんですね」
多々「泣きたくなってきたよ……」
夜「鹿島さん、多々さん、なにをしたの!? さっきのおフダはナニ!?」
静「でも、ちゃんと自我は残ってるんですね。喋れるし動けるし」
多々「そうみたいですね。こりゃ、最初に『おフダを取らないように』と命じる必要がありそうか。ちょっと不便かな?」
静「いえいえ、むしろグッジョブですよ、ご先祖様!」
多々「そうですかい?」
静「相手の反応があるからこそ楽しいんじゃないですか。……さてと」
夜「ヒッ!?」

弾かれたように漏れた悲鳴を聞くと、背中にぞわりとした快感が広がっていく。

夜「い、一体、なにをしたのよ……!」
静「いえ、するのはこれからですってば」
夜「なんだかわからないけど止めてちょうだい!」
静「大丈夫ですよ、ただの実験ですから」

あたしの目標は夜さんじゃなくて、あくまで基祐さんなので。

静「さてそれじゃあ、人には言えない秘密を一つ、教えてください」
夜「え……? そ、そんなのないし、あったとしても言うわけ……はひっ!?」

感じるところを突き上げられたような声をあげて、夜さんは唇を震わせた。

静「さ、どうぞ存分に秘密を暴露してくださいな」
夜「うぐぐ……さ、最近のマイブームは……寝る前に本を読むことなの」
静「はぁ、寝る前の読書? 随分普通だけど……それのどこが秘密?」

ちゃんとおフダは効果を発揮してるみたいで、夜さんはつっかえつっかえ言葉を紡ぐ。

夜「その本は……実は……む、むぐぐっ」
静「む、頑張りますね。でも喋ってもらいますよ。その本は、なんですか?」
夜「うぅー……! 実はその本は……じ……」
静「『じ』?」
夜「ダ、ダメっ、それだけは、いやぁっ……!」
静「フゥー……ほら、黙り込むのもてぇへんだろう? 全部喋って楽になっちまえよ、な? カツ丼食うか?」
夜「ひぃえっ!?」

再び、雷に打たれたように全身を震わせる夜さん。すごい効果だ、このおフダ。

夜「じ、実はその本……自作なんですぅ!」
静「……自作?」
夜「そうなんですぅ! いやぁぁぁその先は言わせないで! 後生だから! 許してお願い他のことならなんでもしますからぁぁぁ!」

無理やり口を割られると、もう半泣きになって、周囲五軒には届きそうな大声で許しを請いだした。

静「は、はぁ、そこまで言うなら……わかりました」
夜「ホ、ホント!? はぁぁ、よかった、よかったよぅ……!」
静「ウソです。どんな内容なんですか?」
夜「はわぁぁぁ!?」
多々「……鬼ですね」
静「普通ですって。で、内容は?」
夜「うぅぅ……い、隕石が降ってくるんですぅ」
静「隕石?」
夜「そう……それでもうこの世は終わりなんですぅ」
静「はぁ。ハリウッド映画みたいな話ですね」
夜「そんな退廃的な世界で、二人は真実の愛を貫きながら終末を迎えるんです……」
静「二人? どんなキャラクターですか?」
夜「……わたしと基祐」
静「……は?」

今、なんて?

夜「メインヒロインはわたしなんですぅ! サイコーにカッコいい基祐の腕に抱かれながら『一緒に死のうね』って甘く囁きあう、そんな話なんですぅ!」
静「……それを自分で書いて、夜な夜な読んでると?」
夜「そう! それがわたしの秘密なの!」
静「ぷっ、ぷぷっ……」
夜「う、うう、ううう……」
静「あははっ、なにそれーっ!? 中学生でもそんな妄想しませんよあーははははは!」
夜「あぁー! もうダメ! イヤ! 殺して! 誰かわたしを殺してぇぇぇ!」

そりゃあ秘密中の秘密だろう。いやぁいいもの聞かせてもらったなぁ。おフダ万歳。

夜「許して……お願い、許して……! わたしがなにをしたっていうの? どうしてこんな仕打ちを……」
静「ちなみに、一番お気に入りのシーンは?」
夜「はぎゃあ!? 泣きじゃくるわたしに、基祐が『愛してる。死ぬまで、いや、死んでも愛してる!』って言いながらキスするところですぅ!」
静「うわぁ、ラブラブだぁー!」
夜「あぁ……! もう、もう、もう……あぁ、苦しすぎて言葉が出てこない……! あぁ、あぁー……!」

いやぁー、妄想の中の夜さんも、こうして恥辱にもだえる夜さんもかわいいなぁ。

多々「夜ちゃん……どうしてその作中の相手役はぼくじゃないんだい?」
静「多々さんは黙っててください」
多々「むぅ、久しぶりのセリフなのに……」
静「でもまぁ……とりあえずはこんなところですかね」
夜「……もうダメ。ダメなのよ。わたしの人生終わっちゃったの。そう、まさにあの小説のラストシーンのように、わたしは永遠の世界に旅立つの」
静「これ以上イジると、壊れちゃいそうですしね」
多々「壊したのはきみだろう?」
静「まぁまぁ。細かいことは置いといて」
多々「こ、細かい……?」

そう、世の中、大体のことは細かいこと。あたしがこの世界にいることだって、細かいことと思えば楽になる。

夜「あ……もしかしてあの小説は……そっかぁ、今日の出来事を暗示してたのね? 今日が世界の終わりなら、わたしはこれから基祐と……エヘヘ」
静「お愉しみのところ失礼しまーす。もう大体おフダの効果はわかったので、実験は終了しますね」

トリップ中でちゃんと聞いてるかどうか怪しいけど、ひとまずおフダの暗示はここまで。最後に……。

静「今から夜さんは寝てしまいます。充分寝て起きたら、今の会話の内容は全部忘れています。ここであたしたちに会ったことも忘れてます。いいですか?」
夜「はぁーい……」
静「それじゃ、あたしが『おやすみなさい』と言ったら寝てくださいね~」
夜「うん、わかった……」
静「あ、それと……」

一つ大事なことを忘れていた。

静「小説のラストを『基祐さんは静への愛を忘れることが出来ず、夜さんを捨てて静の元へ走った』に変更しておくこと」
夜「わかりましたぁ……」
静「それじゃあ、おやすみなさ──」
多々「ついでに『捨てられた夜ちゃんは多々くんとの愛に目覚め、爆発する地球から宇宙船で脱出、火星に移り住んで、幸せな家庭と第二の地球を築いた』に変更!」
静「ちょっ、多々さん!?」
多々「そのくらいいいだろう? 忘れられてるけどあのおフダ、ぼくのだよ?」
静「むぅ、そう言われると……」

……で、肝心の夜さんは?

夜「ぐぅ……」
静「もう寝ちゃってますね」
多々「ちゃんとぼくの命令、聞こえたかな」
静「どうでしょうね。……さて、じゃあ次はあたしの本番ですね」

ということで、早速基祐さんのところに赴こう!

静「っと、その前に、多々さん」
多々「なんですかい?」
静「ムゥン!」
多々「ほげぇ!?」
静「フゥー……北斗七転八倒! これでしばらくは目を覚まさないはず」

では、いざ往かん! 約束の地へ!

──続く
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/27(木) 23:46:32|
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