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念ずれば夢かなう

基祐『おはよ』
静 『おはようございます』
基祐『あれ、姉さんはまだ起きてきてないのか?』
静 『そう……みたいですね。まだ見てませんけど』
基祐『珍しいな、寝坊なんて。お前ならまだしも』
静 『もう、またそんなこと言うんだから』

ガラッ

夜 『おはよう……』
基祐『おう、起きてきたか』
夜 『ごめんなさいね。ちょっと寝不足で……』
基祐『いいけど、疲れてんなら無理するなよ』
夜 『ありがとう。なんともないから』

静 『そうそう、今日は基祐さんの夢をみたんですよ! 聞いてください!』
基祐『奇遇だな。俺もお前の夢をみたよ』



静 『え、うそ。どんな夢ですか? もしかして二人で同じ夢を見てたりして!』
静 『ちなみにあたしは、空タクで優雅かつ華麗に、二人で空中散歩を楽しむ夢でした……。あぁ、目が覚めなきゃよかったのに』
基祐『そのまま永眠しちまえよ』
静 『ひどっ! ……で、基祐さんはどんな夢でした?』
基祐『お前が肥溜めに落ちる夢だ』
静 『……』
基祐『……』
静 『夢は欲望の発露って言いますけど、もしかしてそういう趣味が?』
基祐『あるわけねーだろッ!』
静 『――!』
基祐『――!』

夜 『……』

――翌日

基祐『ふぁ……はよっす』
静 『おはようございまーす』
基祐『ん、また姉さんは寝坊か』
静 『そうみたいですね。ホントに疲れてるんでしょうか?』
基祐『さぁなぁ……』

ガラッ

夜 『おはよう……すぐ朝ごはんの支度するわね』
基祐『はよ――って顔色悪いぞ、姉さん。どうしたんだ?』
夜 『なんでもないわ。ただの寝不足だから』
基祐『昨日もそうだったじゃないか。ちゃんと寝ろよ』
夜 『うん、ありがとう――』

静 『基祐さん基祐さん! 前に植えたアサガオが咲いてますよっ』
基祐『本当か? ……おお、知らねー間に随分立派になったもんだ』
静 『そんな……いきなり褒めないでくださいよう』
基祐『テメーじゃねーよ!』
静 『――』
基祐『――』

夜 『……』

――更に翌日

基祐『……姉さんはまた寝坊か』
静 『どうかしちゃったんでしょうね。年寄りらしく、朝は早い夜さんが』
基祐『「朝は早い夜」か。なんか変な響きだな』

ガラッ

夜 『おは、よう……』
基祐『うわっ! 死体が現れた!』
夜 『ヒドい物言いね……。たった一人の家族に向かって「死体」だなんて』
基祐『だ、だってよお』
静 『でも確かに、死体と言いたくなるのもわかる顔色ですよ、夜さん……』
夜 『ただの寝不足だから……平気だから……』
基祐『……』
静 『……』

基祐『おい静……。姉さん、どう思う?』
静 『どうもこうも、明らかにおかしいでしょアレは……』
基祐『寝不足って言ってるけど、ただの寝不足であんなになるかぁ?』
静 『なにか裏がありそうですね。……調べてみます?』
基祐『ああ……。今夜、姉さんが自分の部屋に戻ってから、調査開始だ』
静 『おうけいです……!』

――その晩

夜 『それじゃ……おやすみなさい』
基祐『ああ。ちゃんと寝ろよ』
夜 『ええ。明日は時間通りに起きるから……』

――パタン

基祐『……よし、姉さんは寝た……かどうかはわからんが、自分の部屋に戻ったぞ』
静 『ミッションスタートですね……!』
基祐『まずは、多々さんに借りたCCDカメラで部屋の中を見てみよう』
静 『多々さんは、これで何を見ようとしてたんでしょうか……?』
基祐『今は考えるな……おっ、映ったぞ』
静 『ふむ……文庫本を広げましたね。寝る前の読書でしょうか』
基祐『本が面白くてつい夜更かししちゃったとか、そんなところか?』
静 『あの顔色はとてもそれだけとは思えませんよ。もう少し様子を見ましょう』

基祐『……』
静 『一時間たったけど、寝る気配がありませんね』
基祐『あぁ。……もう正午だぞ。いつまで読んでるんだ?』
静 『あっ、全部読み終えましたよ。あれだけ熱心に読んでれば、そりゃ一冊くらいすぐでしょうね』
基祐『でも、さすがにこれでもう寝るだろ。することもないし――』
静 『今度は裁縫セットを取り出しましたよ。――パッチワークつくってます』
基祐『……意地でも寝ないって具合だな。なにが姉さんをそうさせるんだ?』
静 『延々と縫い続けてますね……』

静 『――もう二時間続けてますよ。ふぁ……あたし眠くなってきちゃいました』
基祐『一つ作り終えたらすぐに次を作る……一切寝る気が感じられん』
静 『ねぇ、あたしたちはもう寝ません? こっちが寝不足になっちゃいますよ』
基祐『そうだなぁ……っと、おい、姉さんが起き上がったぞ! 部屋から出てくる!』
静 『えっ、ホントだ! どうしよう!』
基祐『とりあえず隠れろ!』

――ガラッ

夜 『……』
基祐(どこ行くんだ? 真っ白の寝間着のままで)
静 (なにか持ってますね。ここからはよく見えませんけど……)

ガラガラツ

基祐(おいおい、家から出ていったぞ!)
静 (えぇっ、もう深夜二時ですよ!?)
基祐(毒を食らわば皿まで。追うぞ!)
静 (は、はいぃ……)

――ザッザッザッ

基祐『寝間着のまま、どんどん山奥に入ってくな』
静 『で、家を出る前からずっと持ってるアレはなんなんでしょ』
基祐『わからんが、多分必要なんだろうな』

――ザッ

静 『あっ、足を止めましたよ。――ここは、神社の裏手ですね』
基祐『なんでこんな薄気味悪いところに……?』

夜 『……』

静 『あれ、手ぬぐいでハチマキしてますよ』
基祐『しかもなんだぁありゃあ。ろうそくを二本、ハチマキに差し込んで……』
静 『人形を出して……釘とカナヅチを取り出して……』

夜 『……っ!』

カツーン!

基祐&静『打ち付けたっ!?』

基祐『まさかこれ、丑の刻参りだったのか!』
静 『これを毎晩やってたから寝不足に!?』

多々『そのとおーうり』

静 『ギャアッ!?』
多々『しいっ! 静かに!』
基祐『……多々さん! なんでここに?』
多々『ここはぼくんちだよ。どこにいようが勝手じゃないか』
静 『確かに神社は多々さんの敷地ですけど……』
多々『ところで基祐くん、カメラの具合はどうだった?』
基祐『ああ、よく映ったよ。ずいぶんいいやつなのか?』
多々『うん。駐留軍の品を横流ししてもらったんだ。満足してもらえたみたいで、よかったよ』
基祐『シロい品ですらないのか、これ……』

多々『で、ぼくの知る限り、夜ちゃんはもう二週間もここに通ってるね。毎日だ』
基祐『二週間!? ……そこまでして、いったいなにを呪ってるんだ』
多々『静かにして、じいっと聞いてごらん。かすかに聞こえてくるから』
基祐『お、おう……』
静 『夜さん、なにを……?』

カツーン

夜 『……ろ』

カツーン

夜 『……なれろ』

カツーン

夜 『……らはなれろ』

基祐『……ラハナレロ? 呪文かなにかか?』
多々『ちゃんと最後まで聞いて……』

カツーン

夜 『……離れろ』

カツーン

夜 『……基祐から離れろ』

カツーン

夜 『……は基祐から離れろ』

静 『ま、まさか……』
多々『しっ! 静かに』

カツーン

夜 『……さんは基祐から離れろ』

カツーン

夜 『鹿島さんは基祐から離れろっ』

カツーン

夜 『鹿島さんはっ! 基祐から! 離れろっ!』

静 『あ、あたし……!?』
多々『彼女、もう二週間もああやって呪いを掛け続けてるんだよ』
基祐『はぁー……』

カツーン

夜 『離れなさいよっ! えいっ! ええいっ!』

ガンッ、ガンガンッ

夜 『あんたみたいな野良猫にっ! たぶらかされてたまるもんですかっ……!』
夜 『基祐は渡さないわ……! くのっ、くんのぉっ!』

グサッ、グリグリッ

夜 『あんたなんかこうよっ! くぬっ! うぬぬぬっ!』

基祐『なんか……形相が……』
静 『ものすごい顔……なんか心臓が痛くなってきそうです……』

夜 『ケケェーイッ! キャーハハハハ!』

夜 『……』

夜 『……さてと、帰りましょ』

ザッザッザッ……

静 『……行っちゃいましたね』
多々『ぼくがどうして彼女のことを知ってるか、わかった?』
基祐『そりゃあ……夜中にこんな奇声が聞こえてくりゃあな』

多々『ぼくも怖いんだよ。まさか教えたことをこんなふうに使うなんて思ってなかったから』

基祐『教えたこと!?』
多々『うん……。前に、呪術について教えてくれって頼まれてね。ダメだって言ったんだけど、どうしてもっていうから断りきれなくて』

多々『脱ぎたての靴下三足で手を打ったんだ』
基祐『アホかッ!』
多々『これこれ。まだ香るんだよ……くんくん』
基祐『嗅ぐなッ! ……って、それ俺の靴下じゃねぇか』
多々『オゲェーッ!?』
基祐『ったく……バカ奴らが』
多々『オゲロゲロゲロォーッ!』
基祐『吐きすぎだ!』

静 『でも、なんで夜さんはあたしを呪ってるんでしょう……』
基祐『なにか心当たりは?』
静 『……』
基祐『おい?』
静 『ちょっとありすぎて、どれのことだか……テヘッ』
基祐『お前……!』

多々『でも真面目な話、このままだと良くないよ』
基祐『こんな時間にこんなことしてりゃ、そりゃ体調も崩すわな』
多々『そうじゃないんだ。これを見てごらん』

静 『さっき、釘を打ち付けてた藁人形?』

多々『そう。ここのところ、右巻きに作られているだろう? 本当は左巻きに作らないといけないんだ』
基祐『間違えてる、ってことか』
多々『これは最悪だ。相手に効果がないどころか、自分に跳ね返っていっちゃうよ』
基祐『自分に!? もしかして、最近やたら姉さんの顔色が悪いのは……』
多々『呪いのせいだろうね。どうも儀式を中断するつもりもなさそうだし、このままだと本当にまずいよ』
基祐『どうすりゃいいんだ? なにか方法は?』
多々『なに、簡単だよ。呪いが成立すれば彼女はここに通うのを止めるだろう』
基祐『呪いが成立……?』

静 『……つまり、一芝居打てってことですね?』
多々『そういうこと。きみたちが、見せかけだけでも険悪ムードになれば、夜ちゃんは呪いが成立したと思うだろう』
多々『ということで頼むよ。きみたちで解決してくれれば、ぼくも安眠できるし夜ちゃんの様子を見に来る必要もなくなる』

多々『それじゃおやすみ。よろしくねぇー』

静 『……』
基祐『……やるしかねぇのかな』
静 『そうですね。あたしも、夜さんが死ぬのはさすがに本懐じゃありません』
基祐『はぁ……』

どうしてこう、ややこしい事態が続くのやら。

――翌日

夜 『お、は、よ、ううう……』

ますます死にそうな顔をして起きてきた姉さんの前で。

静 『もう、基祐さんのばかあー!』
基祐『なにおう! お前こそぉ!』

多々さんが「ちょっとわざとらしいくらいがいい」というので、そんな感じに演じてみた。

静 『もう知りません! 口も聞いてあげませんー!』
基祐『望むところだ! どこへなりとも行っちまえ!』
静 『フンだ! バイバイ!』
基祐『フン!』

スタスタスタ……

夜 『……なにがあったの?』
基祐『あぁ……静と別れることにした』
夜 『え……っ!?』

――本当は、別れるもなにも初めから付き合ってないんだが。

夜 『ほんとうなのっ!?』
基祐『ああ』

姉さんの表情が、スイーツを目の前にした女の子のように輝く。
腐乱死体寸前だったさっきまでとは、エンジェルフォールもびっくりな落差だ。

夜 『これでようやく、基祐はわたしのものになるのねっ!?』
基祐『あぁ……あぁ!?』

それはなにかおかしいような……。

夜 『ようし、最初の恋のおまじないは成功したわ……!』
基祐『あれが「恋のおまじない」だって?』

夜 『次は……そうね。今度こそあのブタの息の根を止めないと……またいつ帰ってくるとも限らないし』
基祐『ぶ、ぶた?』

静のやつ、随分本格的に姉さんに恨まれていたらしい。

基祐『で、でも殺すのはまずいだろう?』
夜 『いいじゃない。あなたはもうアレとは関係ないんでしょ?』
基祐『モノ扱いかよ……。そういう問題じゃなくてな』
夜 『えーと、次のおまじない「負け犬にむち打って呪い殺す方法」は――』
基祐『――!』

このヒト本気だ!

ガラガラッ

多々『どうもー。基祐くん、首尾はどうだい?』
基祐『おう、いいところに! 上手くいったはいったんだが……』
多々『ふむ?』
基祐『上手くいきすぎて味をしめたらしい。今度は静を呪い殺すつもりなんだと!』
多々『それはそれは……はぁ、仕方ない。夜ちゃんに呪術を教えたのはぼくだ。なんとかしよう』

多々『要は、彼女を神社に立ち入らせなければいいんだ。あの場所でないと効果はないからね』
基祐『おおっ! 多々さん、なんだか今日は格好いいぜ!』

夜 『あら多々さん。その節はどうも。うふふっ』
多々『ふぅむ……』
夜 『なんですの? そんなにジッと見つめて』

多々『……』
夜 『どうかなさいまして?』
多々『昨日は……薄桃色に、中央にリボン。小さくフリフリが付いていましたな』

夜 『ッ!?』

多々『一昨日は白。やはりワンポイントにリボンが。チェックのリボンもオツですな』
多々『それはそうと、少々キツすぎたのでは? ゴムの跡がくっきり付いていたではありませんか』
夜 『――!』
多々『その前は……ははっ、大人っぽさを演出したい気分でしたか? 黒のシースルーとは、どこでそんなものをお買い求めになったのやら』

夜 『どうして……それを……』
多々『ん? なんのことかは分かりかねますが……』

多々『当神社では、防犯上の理由から高感度CCDカメラを至る所に設置しておりましてね。まぁあなたには関係の無い話ですが……』
夜 『~~~っ!』

夜 『基祐っ!』
基祐『な、なんだっ!?』
夜 『もう金輪際、あの神社に近寄っちゃダメよ! わたしもう二度と行かない!』

夜 『あぁっ、鳥肌が収まらないっ……キモチワルイキモチワルイキモチワルイ……ッ!』

ガラッ、バタンッ!

基祐『……逃げた』
多々『ま、ぼくの手にかかればざっとこんなもんですよ』
基祐『あんた……その生き様は尊敬に値するよ』

とりあえずは一件落着、でいいのか……?


――そのころ静は。

静 『ぬふふ……これでいいのね?』
静 『ちゃんと左巻きの藁人形……こいつを使えば……!』
静 『とにかく、これで今度は夜さんに仕返ししてやる!』

カシャッ

静 『ん、シャッター音? ……気のせいか』

静 『どっちが上の立場かって、しっかりわからせてやらないとね!』
静 『らんららんららーん』


多々『――おや、また誰かカメラ網にかかったようだね』
基祐『あん?』
多々『これは……静ちゃんじゃないか。藁人形で何かしようとしてるね』
基祐『あぁ……そいつはもう撮って欲しいんだろ。思う存分存分見てやってくれ』
多々『もちろんさ。あぁっ、早く匂いを伝達する機械が開発されないかなぁ!』

はしゃいでる多々さんを脇目に、タバコとオイルライターを取り出して。

基祐『……ったく、バカ奴らが』

紫煙を夏の空気の中でくゆらせた。

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  1. 2011/06/07(火) 01:42:44|
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