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木人形のおフダ(その一)

ここの日差しの下を歩くと、決まって浮かぶ言葉がある。

静「……暑い」

shizuka01.jpg

この地に住んで長いこと経つけど、暑いもんは暑い。
外から来た人なんかには「暑いのは得意なんでしょ?」と言われることがよくあるけど、暑いもんは暑い。
そう、暑いもんは暑いのだ。
冬のジョシコーセーは寒くてもミニスカを履く。履いてるうちにある程度慣れるけど、それでも寒いもんは寒い。それと同じじゃないかな。
──こうして目玉焼きが焼けそうな暑さの下を歩いていると、このままだと死ねるなぁ、とか思う。
でも苦しそうだし、熱射病で死ぬのは遠慮したい。
そう言えば、冬山で遭難すると眠くなって、いい気持ちのまま死ねるとか。いいなぁそれ。あたしも山登ろうかな。

多々「──ふんふ~ん、とーつぜんコクられちゃったぞーどーしよう、どーしろと!?」

ota01.jpg


と、前から人影が。なんか可哀想な歌うたってる。

多々「コ、イ、バ、ナ、終わ……おや、静ちゃんじゃないか。こんにちは」

そして至って平然と話しかけてくる。痛々しい鼻歌を聞かれたことなんて、蚊に刺されたほどの痛みすら感じてないみたい。

静「こんにちは多々さん」
多々「うん、さようなら」
静「ちょい待て!」
多々「ほげぇっ!」

いきなり去ろうとするオッサンの襟首を掴む。

多々「げほっ! なにするんだいキミは!」
静「会った次の瞬間に去ろうとする人がありますか!」
多々「そんなこと言われても。こう見えてもぼくは忙しいんだよ」
静「息をするように嘘をつく人ですね」
多々「どうしてそうもはっきり決め付けるんだいキミは……」
静「あなたが出てくる必要があったから、ここでわたしとすれ違ったんですよ。そうじゃなかったらあなたは、家に引きこもって膝抱えてる役だったでしょう」
多々「だから何故そうと決め付け……まぁいつもやってることだけどね、それ」
静「あはは! じゃあ今度みんなで写メ撮りに行きますね! 膝抱えながら∞の字書いてるところ!」
多々「あぁ、いつでも来るがよいよ。全力で∞の字を書きながら待とうじゃないか!」
静「あはは!」
多々「わはは!」
静「で、どうなんです多々さん」
多々「……はい?」
静「どうして鼻歌口ずさみながら上機嫌で歩いてたのかって聞いてるんですよ。三度は言いませんからね」
多々「初めて聞いたような気がするなぁ……。しかも超信地旋回したように話の方向性が変わったね」
静「三度は言わないと言いましたけど」
多々「ご、ごめんよ。実はだね……」

多々さんはポケットに手を入れて、何かをまさぐりだした。

多々「コレさ」
静「?」

差し出された紙切れを受け取って、視線をそこに落とす。

静「『巫女巫女看護士』初回限定特典付き予約券?」
多々「なっ!?」
静「『予約特典は5/1サイズ、オペ中患者フィギュア。大動脈からの出血をリアルに再現!』って……グロッ!? しかもデカッ!」
多々「ち、違うんだ! 間違えた!」
静「……」
多々「それじゃなくて、本当はこっちの……!」
静「うぅ……すみません……」
多々「……え?」
静「あたしがボケを要求したばっかりに、多々さんにこんなお寒いお約束をやらせてしまって……」
多々「あ、あぁー……そうやってしみじみ言われると余計凹むなぁ」
静「いや、ホントすみません。……それで、本当はなんなんですか?」
多々「うん。……この前、社務所の奥を整理してたら、こんなものが出てきたんだよ」
静「これは……おフダ?」
多々「そ。随分昔に売り出してたみたいだね。その残りみたい」
静「へぇ……確かに、くんくん、ボロい紙の匂いがしますね」
多々「ちょっ! 大事に扱ってよ! 残り一枚しかないんだから!」

この冴えない感じの、お兄さん……というにはちょっと厳しい男性は、近所の「鎌倉坂神社」の神主なのだ。
神社の境内は、この山村「落葉ノ原」の中にあって木陰が多く、ちょっとした避暑地みたいになってたりする。

静「なんのおフダなんですか? コレ」
多々「ふっふっふ……よくぞ訊いてくれました」

うわー、多々さん、本気で嬉しそうな顔してる。訊かなきゃよかった。

多々「実はこのおフダ、神通力がこもってるのさ」
静「はぁ?」
多々「このおフダを人の体に貼って、命令をすると、その通りに動いてくれるというものなのだよ!」
静「……本当ですか?」
多々「本当だとも。その昔は、罪を犯した者に、その罪を帳消しにするために売り出されたという話が……」
静「パクリじゃないですか!」
多々「失敬な! こっちのほうが古いし、向こうがパクリだよ。それに、効き目はこっちのほうが上さ」
静「まぁどっちでもいいですけど……。それよりも、っと」
多々「ちょっと、なにをして……?」
静「効き目を試してみようと思いましてね。軽くツバをつけて……ペタッと」
多々「はぅぁ!?」

多々さんの額に、件のおフダを貼り付けてみる。

静「さて、それじゃあ……あたしの靴にキスしてください」」
多々「うん、いいとも」

多々さんは、あっさりとした雰囲気で……あたしの右足に口付けた。

静「って、冷静に考えたら汚ッ! 靴が! 靴下が! 足が腐る!」
多々「ホントひどいねぇ、キミ……。やらせたのはそっちでしょうに」
静「……てゆーか多々さん、今、おフダじゃなくて自分の意思でやったでしょ?」
多々「うん、まぁ」
静「あぁぁぁ鳥肌がぁぁぁ!?」

この人気持ち悪いよう!

静「だから靴が腐るっていうんですよ! 基祐さんを跪かせるつもりだったのに……もうお嫁にいけにゃい……!」
多々「大丈夫! うちの巫女は中古でも大歓迎だよ!」
静「……あぁもう! 今のは命令が悪かったですね。次はもっとちゃんとした命令を……」

──と、キョンシーみたいにおフダを貼り付けたまま命令の内容を考えていると。

夜「──はい、ありがとうございました。またお願いいたします」

聞きなれた人の声が耳に飛び込んできた。

静「!」
多々「!」

多々さんと同時に目を見合わせる。

静「やりますか、人体実験!」
多々「ぼくにとっては本番なんですけどね。いきましょうや!」

──続く
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/21(金) 02:30:45|
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